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Portfolio作品集

浅間三十六景

浅間に眠る龍…浅間三十六景

永井沙耶子 小説家

「木挽町のあだ討ち」で山本周五郎賞・直木賞作家(映画化)2026年2月21日より

 柳沢正人先生の作品の中には、人の力が及ばぬものへの「畏れ」があると思う。
 私が先生に初めてお会いしたのは二十年ほど前のこと絵を習いたいと思い柳沢先生の教室に訪れました。
 初めて作品を拝見した時に感じたのは、「これが、日本画なのか」という強烈なインパクトだった。
 当時の私は、歴史小説家になりたい駆け出しのライターだった。
 柳沢先生は、鮮やかな色彩と力強い線、金銀の箔を使い時には画面を分割している。
 私の中にあった「日本画」という枠をぶち破る迫力があった。 そして、描かれる題材も壮大だ。
 彫像の向こうに見えるイタリアの風景を描いた作品は迸るエネルギーと共に、流れる時間の中でも尚、変わらぬものへの尊敬があった。
 幕張のワールドビジネスガーデンのドーム型天井に描かれた「刻・時空の流転」では正に地球の創生そして宇宙への旅たちという壮大なテーマが描かれている。
 世界遺産を描いた作品では「イグアスの滝」をはじめとする世界三大瀑布は、前に立つだけで滝の爆音と共に水しぶきがこちらにも飛んでくるような迫力がある。
 どの作品の中にも、人の力が及ばない圧倒的な物への恐れと共に、癒されるような温かさと未知への希望も感じられる。
 先生から、教室で教えて頂いたことを思いだす。
 「色の持つ品を大切にすること」「何度も作品の全体像を確かめること」「実際に触れて感じること」 その言葉は私にとって絵画だけに留まらず、小説家になった現在作家活動の中で度々、思い返している。
 そしてその言葉は、先生の作品の中においても表現されている。
 滝や風景はもちろん、宇宙や龍など実際に触れることがかなわないものであっても、先生ならではの感性で触れ、捉えている。
 だからこそ作品を前にした時、その色彩で表された風景が胸に迫って来るのだろう。
 今回の『浅間三十六景展』では、柳沢先生の故郷でもある浅間山が、多彩な姿を見せている。
 春夏秋冬という季節の移ろい、自然の中に聳える浅間山を描くと同時に風景と人々の営みが描かれている。
 これ迄、海外を拠点として活動してきた先生が始めてテーマとして取り組んだのが浅間三十六景展だという。
 自然はやはり優しいだけではない、噴火する姿もあれば、かって牙を剥いた跡ともいえる「鬼押出し」の姿もある。
 これらの作品の中で、穏やか顔と険しい顔の対比が描かれており、柳沢正人作品の魅力が詰まった連作だ。

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